祖母と雷のハナシ
この時期は、5年前に亡くなった母方の祖母を思い出す。
5年前、ちょうど秋の終わるこの時期に旅立った祖母を。
祖母は身体の小さい、笑い方がコロコロとした可愛いひとで
小さい時からとにかく私たち兄弟に甘かった。
(思えば、母の笑い方は祖母のそれによく似ている。)
小さい頃から近所に住んでいた祖母との思い出はあげるときりがないけれど
最も古く、それゆえ最も印象的に記憶に残っている話をしようと思う。
その日、私は祖母と二人で近所のスーパーに出かけた。
真夏の昼下がり。
私はまだ3歳にもなっていなかったと思う。
いつものように自転車の後ろについた子ども用の椅子に座り、祖母の背中につかまっていた帰り道、家まで半分ほどきたところで、急な夕立と雷に襲われた。
吹き付ける雨と雷鳴がとにかく怖かったのを覚えている。
怯える私を知ってかしらずか、普段小さな祖母は身体を大きく揺らしながら猛スピードで自転車を漕いでいた。
いつもは小さく見える祖母がその時ばかりはとても心強く見えたことを今でも覚えている。
当時は、雷に打たれないように急いでくれているんだ!と思っていたけれど
よく考えればあの時、祖母は
「雨に濡れて風邪でも引いたらかわいそう。急いで帰らなくちゃ」
と思っていたに違いない。
ある日突然寝たきりになった祖母と
最後に交わした言葉を
私は今もなくしたままだ。
おばあちゃん孝行なんて何一つできないままで旅立ってしまった祖母
そのコロコロした笑い声を
あの雷鳴の中で揺れる背中を
今日みたいな朱い夕焼けを見ると
ふと思い出す。